この記事でわかること
  • 死後事務委任契約には法律で決まった書式がなく、ひな形は「項目の確認表」として使うのが現実的なこと
  • 契約書に盛り込むべき11の条項と、それぞれが抜けていると何が起きるか
  • 「委任する事務」として書き出しておくべき具体的な項目
  • 財産の分け方や祭祀承継者の指定は、死後事務委任ではなく遺言で決める必要があること
  • ひな形をそのまま使うと機能しない3つの理由と、公正証書で作成すべき理由
目次

自分が亡くなった後の手続きや葬儀などを誰かに任せる「死後事務委任契約」。契約書の作成にあたりひな形を探す方も多いですが、ただそのまま真似して書くだけでは機能しない危険があります。本記事では契約書に盛り込むべき項目や作成のポイント、遺言との違いまでわかりやすく解説します。

死後事務委任契約のひな形|まず知っておきたいこと

法律で決まった書式はない

死後事務委任契約書には法律上の指定フォーマットがありません。そのため手書きやパソコン作成を問わず自由な形式で作成可能です。

決まりがないぶん、書き方で使えるかどうかが決まる

書式が自由な反面、必要な定めや明確な表現が欠けていると契約自体が無効になったり病院や行政の窓口で受け付けてもらえなかったりする恐れがあります。

ひな形は「項目の確認表」として使うのが現実的

市販やネットのひな形を丸写しするのではなく「どんな手続きを任せる必要があるか」を漏れなく確認するためのチェックリストとして活用しましょう。

死後事務委任契約とは

契約書に盛り込むべき11の条項

①委任者と受任者の表示

契約手続きを行う本人(委任者)と、死後の事務を引き受ける人(受任者)の氏名や住所を明記し当事者を明確に指定します。

②委任する事務の内容(最重要)

葬儀の手配や住まいの退去手続きなど、死亡後に任せたい具体的な作業を漏れなく特定して細かく箇条書きで記載する一番重要な条項です。

③委任者の死亡後も契約を終了させない旨の定め

民法上の委任契約は本人の死亡で終了するのが原則です。死亡後も契約を存続させ事務を実行してもらうための特別な条項を入れておきます。

④受任者の報酬と実費の負担

事務を引き受けてもらう相手への報酬額や支払時期、手続きにかかる実費(葬儀代や退去費用など)を誰がどう負担するかを事前に取り決めておきます。

⑤費用の預託と管理の方法

死後事務にかかる支払いに備えて生前に費用を預ける方法や、そのお金を受任者がどのように安全に管理・保管するかを具体的に定めます。

⑥契約の解除に関する定め

生前に双方の事情が変わった場合の解除条件や、本人の意思に反して相続人から勝手に契約を解除されないための対策条項を定めておきます。

⑦報告義務と相続人への引継ぎ

事務が完了した後に受任者が誰へどのように業務報告を行うか、また残った財産の精算や相続人への引き継ぎ手順について定めておきます。

⑧受任者が対応できなくなった場合の定め

受任者が病気や死亡などで事務を実行できなくなった場合に備え、代わりに事務を引き継ぐ機関や予備の受任者について定めておくと安心です。

⑨守秘義務

受任者が業務上知り得た本人のプライバシーや個人情報を、正当な理由なく第三者に漏らさないよう義務付ける大切な取り決めです。

⑩契約の変更

将来的に希望する葬儀内容や預ける費用などを変更したい場合、どのような手続きを行えば契約を変更できるかその手順を定めます。

⑪管轄・協議条項

万が一契約内容を巡って解釈の疑義やトラブルが生じた際の解決方法や、裁判になった場合にどこの裁判所で解決を図るかをあらかじめ定めます。

【契約書に盛り込むべき11の条項の一覧】

条項 何のための定めか 抜けているとどうなるか
① 委任者・受任者の表示 契約を結ぶ当事者の特定 当事者が曖昧になり契約自体が無効になる
② 委任する事務の内容 具体的にお願いする作業の指定 受任者が窓口で手続きを拒否される
③ 死亡後も存続する旨 死亡と同時に契約を終了させないため 本人の死亡時に契約が自動終了してしまう
④ 報酬と実費の負担 受任者への礼金と費用負担の明確化 報酬の支払いや費用精算でトラブルになる
⑤ 費用の預託と管理 死後の支払資金の事前確保 死後の葬儀代や精算費用が不足する
⑥ 契約の解除に関する定め 生前の契約解除条件と相続人対策 親族から勝手に契約を解除されるリスク
⑦ 報告義務と引継ぎ 完了報告と遺品・残金の引き渡し 相続人に不信感を与えトラブルに発展する
⑧ 受任者不能時の定め 受任者が動けない場合の予備策 予期せぬ事態で誰も手続きを行えなくなる
⑨ 守秘義務 個人情報やプライバシーの保護 本人の死後に個人情報が漏洩する恐れ
⑩ 契約の変更 生前に内容を修正・追加するため 途中で希望が変わっても内容を修正できない
⑪ 管轄・協議条項 トラブル時の解決手段の規定 万が一の訴訟時に裁判所が決まらず難航する

「委任する事務」に書き出す項目

亡くなった直後の対応(親族・関係者への連絡、遺体の引取り)

病院等からの危篤・死亡連絡の受け取り、遺体の搬送手配や引き取り、指定した友人知人・親族への死亡連絡事務を委任内容に含めます。

葬儀・火葬・納骨に関すること

希望する葬儀の規模(家族葬・直葬など)や宗派の指定、火葬手続き、納骨堂やお墓への納骨・供養に関する事務を具体的に定めます。

病院・施設の費用精算と退去手続き

利用していた医療機関の入院費や介護施設の利用料の未払い精算、身の回り品の引き取りや居室の退去手続きを委任事務として明記します。

住まいの明渡しと家財の整理

賃貸マンション等の解約手続き、敷金の精算、部屋に残された家具や家財道具の処分・遺品整理業者への手配などを細かく書き出します。

公共料金・各種契約の解約、行政への届出

電気・ガス・水道の停止、電話やクレジットカードの解約手続き、自治体への健康保険証の返納や資格喪失届などの提出を委任します。

デジタル関連(SNS・サブスクリプションの解約)

スマホやパソコンのデータ消去、定額制サブスクサービスの解約手続き、利用していたSNSアカウントの追悼化や削除事務なども取り決めます。

死後事務委任契約の費用

死後事務委任では書けないこと|遺言との書き分け

財産を誰に渡すかは遺言でしか決められない

預貯金や不動産といった遺産の分け方を死後事務委任で指定することはできません。財産承継の指定は必ず「遺言書」を作成する必要があります。

祭祀を主宰する人の指定は遺言で行う

お墓や仏壇を誰が引き継ぐか(祭祀承継者の指定)も法的効力を持たせるには遺言書への記載が必要です。死後事務委任とは役割が異なります。

死後事務委任と遺言はセットで考える

手続きを行う「死後事務委任」と財産を分ける「遺言」を組み合わせることで、手続き漏れやトラブルを防ぐことができます。

【死後事務委任と遺言で決められること】

決めたいこと 死後事務委任 遺言
預貯金や不動産の分け方 ✕(決められない) 〇(法的効力あり)
葬儀や埋葬の方法・手配 〇(具体的に任せられる) △(付言事項に記載できるが強制力なし)
病院・施設の費用精算 〇(生前の受任者が支払う) ✕(遺言執行事務の対象外)
賃貸物件の退去・家財整理 〇(具体的に任せられる) ✕(遺言執行事務の対象外)
お墓の継承者(祭祀承継者) ✕(指定できない) 〇(指定できる)

ひな形をそのまま使うと機能しない3つの理由

理由①|委任する事務が特定されていないと動けない

ひな形の曖昧な表現のままだと受任者が病院や役所の窓口で「どこまでの権限があるか不明」と判断され、必要な事務手続きを拒否されるケースがあります。

理由②|相続人から解除を主張されることがある

一般的な私文書のひな形では、本人の死亡後に法的根拠を盾にした相続人から「委任契約の解除」を突然主張され事務が中断してしまうリスクがあります。

理由③|死亡届を出せる人が法律で決まっている

戸籍法上、死亡届を出せる人は親族や同居人に限られています。第三者に提出を委任する場合、適切な形式で契約書を作成しておかないと受理されない恐れがあります。

契約書は公正証書にすべき?

法律上は私文書でも有効

法律上は当事者同士がサイン・捺印した私文書の契約書でも成立します。ただし実務上の信用度や証明力には大きな差が生まれます。

それでも公正証書が実務では前提になる理由

公務員である公証人が作成する公正証書なら、本人の意思確認が証明され改ざんリスクもなくなるため、病院や行政手続きでスムーズに認められます。

公正証書にする場合の流れ

文案の作成から公証役場との打ち合わせ、必要書類の提出、公証人前での署名捺印まで専門家のアドバイスを受けながら確実に進めるのが一般的です。

死後事務委任契約は公正証書にすべき?

作成の流れ

STEP1|任せたいことを書き出す

まずは自分の死後に不安なことや、誰かに手伝ってほしい手続き(葬儀・片付け・解約など)をノート等に漏れなくリストアップします。

STEP2|受任者を決める

頼みたい事務を最後まで責任を持って実行できる受任者を選びます。信頼できるご親族のほか、確実性を重視して弁護士等の専門家に頼むのも選択肢です。

STEP3|費用と支払い方法を決める

手続きに必要な実費の見積もりや受任者への報酬額を算定し、生前に預託金として信託口座等へ預ける方法や管理手順を取り決めておきます。

STEP4|公正証書として作成する

まとまった契約内容をもとに公証役場で公証人に公正証書を作成してもらいます。内容のチェックも含め専門家への相談がスムーズです。

終活と相続のまどぐちにご相談いただいた場合

ご希望を伺い、必要な事務を整理してご提案します

お客様のご状況やご家族構成、ご希望の供養方法などをじっくりお伺いしたうえで、将来にわたって必要となる具体的な死後事務プランをご提案します。

契約はグループの弁護士法人東京新宿法律事務所と締結します

契約の受任者は、グループの弁護士法人東京新宿法律事務所です。法律のプロが作成した契約書を用いるので、契約内容に抜け目がなく、執行の際も安心です。

預り金はグループの弁護士法人が管理します(信託口座での管理も可能)

葬儀代や退去費用などの預託金は上記の弁護士法人が厳重に管理します。ご希望に応じて信託口座での安心した資金管理スキームも選択可能です。

新宿マルイ本館7Fで対面相談を承ります

買い物ついでにも立ち寄りやすい新宿マルイ本館7Fに店舗を構えております。プライバシーに配慮した落ち着いた空間で直接ご相談いただけます。

※ご相談は無料です。
※お電話での事前予約制とさせていただきます。

無料相談・お問い合わせ

死後事務委任契約や終活のご不安は、まずはお気軽にご相談ください。

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死後事務委任契約のひな形に関するよくある質問

インターネットで配布されているひな形を使っても問題ありませんか?
参考程度に使うのは問題ありませんが、ひな形をそのまま使うと個人のご事情に合わず、実際の窓口で拒否されたりトラブルになる危険があるため注意が必要です。
家族に頼む場合でも契約書は必要ですか?
家族であっても死後手続きの権限を明確にし、他の親族との揉め事を防ぐために必要です。特に費用預託を伴う場合は口頭でなく書面で作成すべきです。
契約書は自分で作成できますか?
自分だけで作成(私文書)することも可能ですが、不備があると機能しません。確実に手続きを行えるよう、公正証書として作成することを強くおすすめします。
契約したあとに内容を変更できますか?
生前であればいつでも内容の変更や契約の解除が可能です。ただし公正証書で作成している場合は、変更手続きも公証役場で行う必要があります。
遺言書があれば死後事務委任契約は不要ですか?
遺言書は主に財産の分け方を決めるもののため、葬儀の手配や施設の退去、解約手続きなどはカバーできません。両方を組み合わせて用意するのが最適です。
認知症になってからでも契約できますか?
契約を結ぶには十分な判断能力(意思能力)が必要となるため、認知症が進行した後は作成できません。お元気な生前のうちに早めのご準備をおすすめします。

まとめ|ひな形は出発点、機能させるのは「特定」と「公正証書」

死後事務委任契約のひな形は、どのような項目が必要かを整理するための「出発点」として非常に役立ちます。しかし、ご自身の希望に合わせた具体的な「事務の特定」ができていなければ、いざという時に役所や病院で受け付けてもらえません。

万全を期してご自身の意思を叶えるためには、公的な証明力を持つ「公正証書」での作成と、専門家への相談が一番の近道です。

「終活と相続のまどぐち」では、お客様一人ひとりに合わせた死後事務のご提案から、グループ弁護士法人との連携による安全な契約締結までトータルでサポートいたします。将来の手続きにご不安のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

お電話での受付時間:平日/土日11:00~20:00